柔術着|5着よりも1着を長く着る価値
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道着は装備のひとつ。
毎日の稽古に耐え、何度も洗濯されます。
だから生地はすぐに傷み、1〜2年も経たずに買い替えるのが普通です。
稽古を重ねるほど消耗は早まり、最後に残るのは買い替えの負担だけ。
では、数年間にわたって使い続けられる道着は存在しないのでしょうか。
稽古を支え続ける道着とは、どのような素材であるべきでしょうか。
ヘンプを選ぶ理由
ヘンプは、古くから過酷な環境で信頼されてきました。

*新宿消防博物館、江戸時代の消防服。厚く重ねた麻布を水に浸し、炎や熱を防いでいた。-新宿消防博物館*
日本の消防服:江戸時代、火災の多かった木造建築の都市では、消防士たちは麻を厚く重ねた制服を着用していました。水に浸して着用することで、炎や熱を防ぐ効果がありました。これは単なるデザインではなく、火・熱・摩擦に耐える特性が信頼されていたのです。

*ヘンプロープ(コイル状態)―高強度・耐久性を示す実例-ウィキメディア・コモンズ-パブリックドメイン映像*
軍用品と航海装備:ヘンプ繊維は高い引張強度と耐湿性を持つため、ロープ、帆、軍用テントに広く利用されました。特に大航海時代の船舶においては、海水に濡れても強度を保つロープや帆が不可欠であり、その役割をヘンプが担っていました。

*1942年米国政府のプロモーション映像 Hemp for Victory より*
アメリカの「Hemp for Victory」キャンペーン:第二次世界大戦中、アメリカ農務省(USDA)はヘンプ栽培を推奨する映像を公開しました。理由は単純です。輸入繊維が不足していただけではなく、ヘンプ自体がロープやキャンバス、軍用品で強さと耐久性を証明していたからです。
このように、ヘンプは単なる「伝統的な素材」ではなく、繰り返しの荷重や湿気、摩擦が極めて厳しい条件で選ばれてきた、実用的で信頼性の高い繊維でした。
柔術道着が毎日さらされる条件とは

ブラジリアン柔術の道着が日々さらされる条件も、これと変わりません。
汗・洗濯・摩擦に耐え続けなければなりません。
一般的な柔術道着(綿製)は馴染みがありますが、すぐに擦り切れ、汗の臭いも残りやすく、結局は長持ちしません。
一方で、ヘンプを使用した柔術道着は湿潤強度・耐摩耗性・抗菌性を同時に備えた、数少ない天然繊維の一つです。
長持ちする道着の条件

毎日使う装備は、手入れが簡単でなければなりません。
扱いが面倒な装備には意味がありません。
ヘンプ道着は、荒く使っても10〜20回ほど洗濯すれば体になじみ、とても快適になります。
そうしてなじんだ道着は、日々の稽古を続ける力になります。
私たちが求めているのは、単なる「新しい」道着ではありません。
流行に左右されず、初めの形と機能を長く保てるものです。
道着は数よりも、ひとつを長く着ること。それが、本当の強さを育てる。
ヘンプ道着の素材とブランド理念

最初にコストがかかっても、ヘンプ道着の価値は長く続きます。
柔術の稽古も同じです。
短期間の成果よりも重要なのは、反復と継続、そして正直な稽古を重ねていくことです。
かつて消防士が火の中で信頼したその素材が、現代のマットの上でも同じ信頼を与えると私たちは信じています。
これからも、稽古を支え続けるヘンプ道着を届けていきたい。
だからこそ、私たちはヘンプを選びました。
参考資料:
消防博物館 所蔵「江戸時代の消防服」展示写真
大航海時代の帆船と麻ロープ(Wikipedia Commons)
Hemp for Victory (USDA, 1942年) – YouTube 公開映像