これは単なる道具の話ではありません。毎日私たちが戻ってくる場所――稽古、繰り返し、そして道場に立ち続けることで育まれる静かな強さ。
私たちがブラジリアン柔術に出会ったのは8年前です。毎日の稽古を通じて、繰り返しの中から誠実さや規律、そして粘り強さを学びました。しかし、道着はすぐに擦り切れ、生地が薄くなり、頻繁に買い替える必要がありました。そこで、私たちは自分たちが本当に着たいと思える道着を作ることにしました。短期間で消耗するものではなく、長く稽古に使えるものを目指しました。その答えがヘンプでした。ヘンプは綿よりも強く、清潔で、毎日の汗や摩擦に耐えられる素材です。消費されるだけの道具ではなく、長く使い続けられる道着を作ろうと考えました。
日本では古くから麻は清浄や集中の象徴とされてきました。儀式や武道、日常生活でも本質を重んじる場面で選ばれてきた素材です。江戸時代には消防服や武道衣に使われていました。また、嘉納治五郎が19世紀後半に柔道衣を考案したとき、その原型となったのは麻布の作業着でした。投げや組み手、連日の稽古に耐えられる衣服だったのです。やがて綿が主流となりましたが、麻本来の耐久性は失われました。
現在の道着の多くは綿で作られています。馴染みやすい素材ですが、柔術の毎日の稽古には数年しか持ちません。一方で、ヘンプは消防服や武道衣、縄や帆布など「長く使うことが前提のもの」に使われてきました。綿の3〜4倍の強度があり、天然の抗菌性と通気性を備えています。適切に扱えば、ヘンプの道着は10年以上お使いいただけます。
ヘンプが年月の稽古にどのように耐えるのかを知るために、毎日着て、洗って、変化を記録しています。